メニュー

サッカー選手に必要なウォーミングアップを考える(傷害予防・パフォーマンス向上の観点から)

[2019.12.10]

サッカーブログ題字(2019.12.10).001

老若男女問わずどのスポーツでもその大切さは広く知られている「ウォームアップ」。それぞれの種目で求められるパフォーマンスの種類によって、最適なウォームアップの種類は変わってきます。

 

今回はサッカーに着目して、ウォームアップの目的やその方法について、実際に欧州トップクラブの現場の例を取り上げながら少しひも解いていきたいと思います。

 

もくじ

1:ウォームアップが必要な理由(なぜ必要なのか?)

2:適切なウォームアップ方法(どんなウォームアップをすればいい?)

3:トップチームの実践例(リバプール / マンチェスター・シティ / バイエルン・ミュンヘン)

4:参考文献

 

 

そもそも、なぜウォームアップが必要なのか?

おそらくウォームアップをしていないチームはあまりないと思います。チームによっては毎日の練習で行うルーティン的なウォームアップメニューがあったり、練習用・試合用などシチュエーション別に中身を使い分けていることもあるでしょう。

 

どの年代であれレベルであれ、まずはウォームアップを行う目的を選手が熟考し、理解していることはとても大切です。「なぜやるの?」が浸透していれば、ウォームアップの質は飛躍的に向上させることができるはずです。

 

photo-1570239324023-8efa9d054799

 

ウォームアップの目的は大きく2つあると考えられます。1つ目は「ケガを予防するため」。そして2つ目は「パフォーマンスを最大化するため」です。少し深掘りしていきましょう!

 

【ウォームアップの目的①】:ケガを予防するため

サッカーは非常にハードなスポーツの一つです。技術的な要素のほか、間欠的な持久力、爆発的なスプリント、加速・減速・方向転換、瞬発力、ボディコンタクト能力など様々な要素が要求されます。同時にいろいろなケガのリスクを伴うスポーツでもあります。

 

イギリスで91のプロサッカークラブチームにおけるをケガの発生状況を検証した文献によると、最も多く報告されたケガの部位は「大腿部(23%)」でした。そこから「足関節(足首)」・「膝」・「下腿」・「鼠蹊部」と続いています。(*1)

 

部位別傷害発生(2019.12.11).001

 

プロ選手を対象とした海外のデータではありますが、育成年代はもちろん学生アスリート、レクリエーショナルレベル(フットサルも!)でも通ずるところはあると考えられます。

 

特にこのデータ上で最も多くを占めた大腿部(太もも)の傷害としては、日本代表のセンターバックとして確固たる地位を築きつつある冨安選手(ボローニャ)、フランス代表FWデンベレ選手(バルセロナ)らがニュースで取り上げられています。

 

<関連記事>

「大ダメージだ…」負傷離脱の冨安健洋は肉離れと伊紙が報道。C・ロナウド擁するユーベ戦の欠場も濃厚に

デンベレ、右ハムストリングを負傷。ドルトムント戦の前半に途中交代

 

photo-1526838890080-053700ebe3d2

 

FIFAでは、サッカー選手の傷害を予防するために「FIFA11+」というプログラムを提唱しています。ランニング動作を含む動的ストレッチ、自体重での筋力トレーニングやバランス、ジャンプなどの様々な要素の入ったメニューなどが組み合わせられています。このプログラムを取り入れることによる傷害予防の効果も、実際に研究で認められています。(*2)

FIFA11+についてはこちら

 

FIFA11+のメニューは特別な器具を使わずに行えるメニューばかり。普段のウォームアップのメニューにFIFA11+のエッセンスを組み込むことで一定の傷害予防効果が期待できそうですが、単に形を模倣するのではなく、きちんとそれぞれのメニューの目的を理解しながら適切な方法で取り組むことが不可欠でしょう。一つの参考として役立てることはできそうです。

 

【ウォームアップの目的②】:パフォーマンスを最大化するため

ウォームアップを行う理由の2つ目は、その後に続くであろう”練習や試合でのパフォーマンスをより最大限に高めるため”です。そして、よりパフォーマンスを高めるための中身としては「動的ストレッチ」を中心に構成するのがおすすめします。

 

▼動的ストレッチを活用しましょう!

”動的ストレッチ(=ダイナミックストレッチ)”とは、その名の通り動きながら筋を伸張させるストレッチの手法です。それに対して「前屈したまま30秒キープ」のように、筋を伸張させた状態で動きを伴わずにキープする”静的ストレッチ(スタティックストレッチ)”と呼ばれる手法もなじみ深い方も多いと思います。誰もが一度はやったことのあるラジオ体操は動的ストレッチの要素が大きいですね。

 

 
 
 
この投稿をInstagramで見る

BLUE8(ブルーエイト)(@conditioningfield_blue8)がシェアした投稿 -

 

 
 
 
この投稿をInstagramで見る

BLUE8(ブルーエイト)(@conditioningfield_blue8)がシェアした投稿 -

 

 

▼適切な動的ストレッチはパフォーマンスを向上させる!

サッカー選手を対象に、ウォームアップにおけるストレッチ内容とスプリントパフォーマンス(スピードと加速)への影響を検証した文献(*3)では、「動的ストレッチのみ」を実施した方がスプリントパフォーマンスが高まったことが明らかにされています。

 

soccer-263716_960_720

 

一方で「静的ストレッチのみ」を実施したグループでは、むしろパフォーマンスが下がってしまったと報告しています。これは興味深いです。

 

最近では「じゃあ、静的ストレッチをしてはダメなの? 」というご質問をいただくことが時々あります。個人的な見解としては、”静的ストレッチをしてもOKです!でも、その後に動的ストレッチも組み合わせた方が良いですよ!”と多くのケースで答えます。

 

先の文献でも、「静的ストレッチ実施後に動的ストレッチを実施したグループ」では、「動的ストレッチのみのグループ」に次ぐパフォーマンス向上の効果がみられています

 

シチュエーションや競技にもよりますが、静的ストレッチを入れた方が動きの感覚が良かったり、単に「静的ストレッチがそもそも好き!」だという方(結構いらっしゃいますし気持ちわかります^^)は、ぜひ動的ストレッチと組み合わせながら行ってみると良いかもしれません。

 

ウォームアップはさまざまな取り組みの中の氷山の一角にすぎませんが、せっかく日々時間をかけるところはより良質な取り組みにしておきたいところです。

 

トップレベルの選手はどんなことをやっている?

では実際に、サッカー界のトップチームではどんなウォームアップを行なっているのでしょうか?YouTube全盛の今では、世界中のあらゆるクラブのウォームアップやトレーニング風景を垣間見ることができます。実際にいくつかのチームを見ていきましょう。

 

①リバプール(プレミアリーグ)

今年のヨーロッパチャンピオンに輝いたリバプール。準決勝バルサ戦2nd-Legでの大逆転は神がかり的な試合展開でした!そんなリバプールのウォームアップを見てみましょう。

 

 

まずは軽いジョグからスタートして、少しずつ段階的にスピードアップしていく構成になっています。やはり中心となるのは動的ストレッチ

 

さらに同じ動的ストレッチでも、進む向きを変えたりしてバリエーションをつけているのが印象的です。良いメニューでも毎日同じ向きや方法でしか行っていないと、選手としてはマンネリ化してしまうかもしれないですね。

 

また、途中で静的ストレッチも少し入れている様子も見えます。後半はラダードリルや方向転換、片足でのストップ動作の入ったメニューも実施していますね。

 

②マンチェスター・シティFC(プレミアリーグ)

続いては同じくプレミアリーグのビッグクラブの一つ、マンチェスター・シティを見てみましょう。試合前ということもあってか、円の隊形になってテンポよくウォームアップが進んでいきます。

 

 

やはり動的ストレッチが中心に構成されていますが、リバプールよりも合間合間に静的ストレッチを入れているイメージがあります。ボールを使った練習に移る前にはストップ動作のポジション(片足・両足)を確認するようなメニューも入っていますね。

 

ミニバンドチューブを使ったドリルが入っているのもシティの特徴です。他の動画をみても、よくシティのウォームアップにはミニバンドが登場する印象。

 

ミニバンドはBLUE8でもよく使っていますが、ここではウォームアップ後の動作で股関節周りをよりしっかり使えるように刺激を入れている(活動後増強:Post-Activation Potentiation)のかもしれません。

 

③バイエルン・ミュンヘン(ブンデスリーガ)

3つ目はブンデスリーガから、バイエルンのウォームアップ。これは試合前ではなく、練習中の一コマのようです。

 

 

先に出てきた2チーム同様、動的ストレッチがメイン。仰向けの肢位で行う動的ストレッチも色々と入っています。

 

バイエルンは2チームに比べて筋力系のメニューが少し多いイメージでしょうか。体幹・股関節周りの筋力を発揮するメニューがいくつか含まれていますね。その後の練習で使うべきところが使えるようになるためにスイッチを入れる意図があるかもしれません。

 IMG_5340

IMG_5341

 

特に学生チームでは勉強や学校行事などとの兼ね合いで、練習に使える時間が限られているというチームが多いと思います。バイエルンのメニューを参考にもう少し負荷を高めたようなメニューを作って、トレーニング要素を含んだ効率の良いウォームアップにするのも実用的なアイデアかもしれませんね。

 

トップ選手の取り組みが全てトップレベルとは限らない

ここで一つ付け加えておきたいこともあります。それは、トップ選手の取り組みが必ずしも全てトップレベルであるとは限らないということです。

 

これはウォームアップでもトレーニングにおいてもそうですし、栄養でも練習内容でも、なんでも言えることかもしれません。ご紹介したトップクラブの動画のなかで行っている動的ストレッチ一つとっても、全員が目的を理解して、コーチの意図の通り完璧に行えているかどうかは分かりません。

 

ですが新たな知見が続々とでてくる昨今、色々なアイデアを得るうえでは、情報化社会の恩恵を活用しない手はありません!いろいろなクラブの動画を見ていて、できるだけ客観的な視点を持って情報に触れていけたら...と思ったところでした。

 

 

【先着予約制】プロから学ぶコンディショニングセミナーのお知らせ

プロセミナーblog1(2019.11.28).001

 

さて、BLUE8では年末12/28(土)に国内プロサッカークラブで専属トレーナーを務める板垣惇哉氏をお招きしてセミナーを開催します。現時点で指導者の方、保護者の方を中心にお申し込みをいただいています!

 

シーズンオフの今しか実現しない企画でしたし、なかなか聞けないお話に触れられる機会になるはずです。非常に参加しやすいお値段ですし、もちろん選手も参加できます。この冬のトレーニングのレベルを一段あげましょう!

 

参考文献

1)Hawkins RD, Hulse MA, Wilkinson C, Hodson A, Gibson M(2001). The association football medical research programme: an audit of injuries in professional football.Br J Sports Med. 2001 Feb;35(1):43-7.

2) Al Attar WS, Soomro N, Pappas E, Sinclair PJ, Sanders RH(2016).How Effective are F-MARC Injury Prevention Programs for Soccer Players? A Systematic Review and Meta-Analysis.Sports Med. 2016 Feb;46(2):205-17

3) Mohammadtaghi Amiri-Khorasani, Julio Calleja-Gonzalez, and Mansooreh Mogharabi-Manzari(2016). Acute Effect of Different Combined Stretching Methods on Acceleration and Speed in Soccer Players. J Hum Kinet. 2016 Apr, 50: 179–186.

 

 

この記事を書いた人サムネ(2019,12,10).001

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME