【ジュニア世代と運動能力】「子どもロコモ」、大丈夫ですか?
「子どもロコモ」という言葉を耳にしたことはありませんか?「ロコモ」とはロコモティブシンドローム(運動器症候群)の略称で、日本整形外科学会によると”骨や関節、筋肉など運動器の衰えが原因で、 「立つ」「歩く」といった機能(移動機能)が低下している状態のこと”をいいます。
どちらかといえば大人のイメージが強そうな”ロコモ”ですが、近年ではこういった状態がなんと子ども世代にまで頻繁にみられるようになってきていることから、”子どもロコモティブシンドローム”という言葉が生まれているということです。
4つの基本動作、バッチリできますか?
基本的な動きができていない子が、40%も?
運動不足をはじめ、姿勢不良などを伴う子どもの運動能力の低下は深刻化してきています。子どもロコモの兆候がみられると、将来的に大人になってからのロコモティブシンドロームのリスクを高めることが考えられます。
埼玉県整形外科医会がのべ1000名以上の子どもたち(幼稚園児、就学児童、小・中学生)を対象に行った基本動作チェックというものがあります。この上の写真にある4つのいたって簡単な(と言いたい)テストを規定のやり方できちんと行えるかどうかをチェックしたそうなのですが、なんと4割もの子どもたちがこの運動を一つも正しくできなかったということでした。
子ども全体の骨折発生率はここ40年間で2.5倍に増加しているという報告も。この4つのチェックのような基本的と言える動作が身についていなかったり、運動経験を十分に積んでいないままいきなり専門的なスポーツ種目に取り組んでしまうのは、やっぱりケガに繋がりやすいと予想されます。例えばきちんとしゃがめる可動域がないのにバスケットボールの練習でジャンプ動作をくりかえしたり、肩がしっかり上がらないのに水泳の泳ぎ込みをしていたとしても、がんばりと裏腹にケガのリスクは大きくなっていく一方ではないでしょうか。
時代とともに生活はどんどん便利になっていますが、この便利化社会が子どもロコモの引き金の一つだと考えられています。ここ最近の子供たちでいえば、最たるところが「スマホ」かもしれませんね!スマホがあれば大抵の遊びは完結してしまいそうですが、そのぶん運動する機会はどんどん少なくなっているのかもしれません。
ジムにやってくるジュニアアスリートや、出張指導で伺う選手たちは自分のスマホを持っている子たちはもう全然珍しくないですし、むしろ持っている子の方が多いかもしれません。私が小中学生のころは携帯は持っていませんでした。当時世に出ていたのはガラケー(死語でしょうか?笑)でしたが、同級生でも持っていた人はごく少数でしたね。
楽しみながら、基礎的な動きを身につけることが大切
先日有明にて参加した「ジャパンコーチズアワード」のときに、国内の育成研究の第一人者である小俣よしのぶ氏(ドームアスリートハウスアスレティックアカデミーアドバイザー / いわきスポーツクラブアカデミーアドバイザー)のお話を拝聴したのですが、近年の育成年代が抱える課題として、この子どもロコモの話題にも触れておられました。
私たちも小・中学生のスポーツ現場に足を運んだり、ジムにきてくれている子どもたちもいますが、この年代は特にスポーツ競技に特化した練習や専門的なトレーニングの時間だけにできるだけ偏りすぎないように、可能な限りいろいろな動きを体験することも大切だと感じています。
もちろん競技ならではのトレーニングも取り入れますが、目先の結果だけでなく長い目でのキャリアの成功であったり、もっと根本的にスポーツを思いっきり楽しんでもらえたらなという思いです。成長期特有のスポーツ障害予防のためのエクササイズも、いろんなバリエーションで実践するようにしています。
盛岡姫神シニアではトレーニングの時間の中で遊びの要素の入った運動も時々していますが、合間合間にこういったメニューを入れることで、一見地味な基礎トレーニングにも前向きになってくれている実感もあります。
「子どもロコモ」は運動不足と自覚のある子どもたちだけではなく、スポーツチームに所属している選手たちも他人事ではないかもしれません。事実、年代を問わず深くしゃがみこめなかったり、前屈動作に自信のない選手は少なくないのではないでしょうか?
運動の機会が少なくなりがちな現代だからこそ、とくにジュニア世代の選手たちにはいろんな要素を取り入れて指導していきたいと思っています。
<参考文献>
林ら.子どもロコモと運動器検診について.日整会誌(J. Jpn. Orthop. Assoc.)91:338‐344(May 2017)
▪️関連記事
▪️外部セミナーのお知らせ
3/8(日)に盛岡市にて行われる「NSCAジャパン東北ADセミナー兼盛岡市ジュニアスポーツ医・科学セミナー」の午前中の講義をチーフトレーナーの君塚が担当させていただきます。
詳しくはこちらからご覧下さい。